第1回ワクチンフォーラム

講演2 ロタウイルス胃腸炎とロタウイルスワクチン

座長:国立感染症研究所 感染症情報センター 第三室長 多屋 馨子 先生

演者:札幌医科大学医学部小児科学講座 教授 堤 裕幸 先生

ほとんどの乳幼児が罹患するといわれるロタウイルス胃腸炎は、重度な脱水を招きやすいウイルス感染症である。ときに重篤な合併症を引き起こすが、今やワクチンで予防できる病気(VPD)の1つでもある。本講演では小児感染症学がご専門である札幌医科大学医学部小児科学講座 教授 堤 裕幸 先生が、ロタウイルス胃腸炎の病態およびロタウイルスワクチン「ロタリックス®」の有効性について解説した。

  • ただの下痢や嘔吐ではないロタウイルス胃腸炎

    ロタウイルス胃腸炎は、水様性下痢や激しい嘔吐を頻回に繰り返すことで、重症の脱水をきたすことが多い。脱水症状に対して、経口水分補給を行うが、小腸絨毛の先端約1/3の細胞が破壊されているため、生理機能が低下し、水の吸収阻害が起こっているためうまくいかず、脱水が進行することがある。これによって、ときに高尿酸血症、尿管結石などの重篤な合併症をもたらす。
    そのほかにも中枢神経系ではけいれん群発、髄膜炎、脳炎・脳症、消化器系では消化管出血・潰瘍、急性膵炎など、多くの器官系にわたって重篤な合併症を発症することがあり、背景にウイルス血症があるのではないかと考えられている(表1)。

    表1 ロタウイルス感染症の重篤な合併症

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  • ロタリックス®の有効性

    ヒトに感染するロタウイルスは、G1P[8]、G2P[4]、G3P[8]、G4P[8]およびG9P[8]の5種類で90%以上を占める。ロタリックス®はG1P[8]に属するヒト由来株からつくられたワクチンであるが、交叉免疫によって、2回の接種により前述の他の血清型に起因するロタウイルス胃腸炎に対しても8~9割以上の予防効果が示されている。
    香港・シンガポール・台湾といったアジアの主要先進地域で実施された重症ロタウイルス胃腸炎の発症およびロタウイルス胃腸炎による入院を検討した試験では、ロタリックス®接種後3歳まで、優れたワクチン効果が認められている(図1)。

    図1 アジア先進3ヵ国における3年間の有効性(海外データ)

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  • 今後のロタウイルスワクチンにおける課題

    既にロタリックス®は世界各国で導入され、その有効性・安全性が確認されている。わが国では2011年11月より接種可能となったが、現在のところ任意接種のワクチンに分類されている。しかし、重症化や重篤な合併症の発症を考慮すると今後、定期接種に組み入れることが求められるだろう。
    また、ロタウイルスワクチンの接種にあたっては、その接種時期について留意する必要がある。米国の調査では腸重積の自然好発時期は、生後26~29週であることが示されている(図2)ことからも、腸重積の紛れ込みを防ぐために、自然発症のピーク時におけるワクチン接種は、望ましくない。腸重積のことや同時接種を考慮してロタウイルスワクチンは、生後8~14週の間に初回接種することを日本小児科学会は推奨している。

    図2 米国における乳幼児10万人あたりの腸重積発症数

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  • まとめ

    WHOの公式見解にあるように、ロタウイルスワクチンの第一目標は、ロタウイルスによる死亡と疾病の重症化を防ぐことである。先進国においてロタウイルスワクチンを定期予防接種プログラムに組み込むことは費用対効果に優れた介入である。
    今後、小児科医はワクチン接種スケジュールの啓発を強化するとともに、ロタウイルスワクチンを定期接種に組み入れるべく働き掛けていくことが重要であると考える。