第1回ワクチンフォーラム

基調講演 講演1 どのようなワクチンが国民を守るのか ~アジュバント・抗体価のもたらす恩恵~

座長:川崎市衛生研究所 所長 岡部 信彦 先生

演者:国立病院機構 三重病院 院長 庵原 俊昭 先生

近年わが国に新しいワクチンが次々に導入されているが、有効かつ安全な製剤として、どのようなワクチンが国民を守るのか。ウイルス感染症の研究から多年にわたりワクチン開発に取り組み、国産ワクチンの早期開発を実現してきたワクチン研究の第一人者、国立病院機構 三重病院院長 庵原 俊昭 先生が、ウイルス感染と発症・免疫、ワクチンの接種時期、ワクチンと免疫、副反応について解説した。

  • ウイルス感染と発症・免疫

    感染症は病原体の増殖だけではなく宿主の免疫反応が起こることで成立する。一般にウイルスに感染すると、細胞表面にウイルス抗原が発現される。ウイルス抗原が宿主の免疫機構に認識されることで、NK細胞やキラーT細胞などが働き、感染したウイルスが排除される(図1上)。一方、ヒトパピローマウイルス(HPV)は感染しても宿主の細胞表面にウイルス抗原が発現されず、核内でゲノムを複製して潜伏感染状態になる(図1下)。

    図1 一般的なウイルス感染とHPV感染後の免疫応答

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    このように潜伏感染したHPVは、免疫機構に認識されることがないため排除されず、長期にわたり持続感染し、ときに細胞の異常分裂を引き起こしがん化へと進展する。感染予防や発症予防は、感染力と抵抗力の2つのバランスの上に成立している。しかしHPVもロタウイルスもこの発症予防レベルが不明であるため、ワクチン接種後のフォローが大切である。また、HPVに関しては、接種後長期間にわたり、獲得した抗体価を維持することが感染予防に重要であり、高い抗体価を維持できることは、接種医にとっては安心できる要素の1つであると考えている。

  • ワクチン接種時期の考え方

    感染症を予防するワクチンの接種時期はさまざまな考えに基づいて決定されるが()、発症リスクが高くなる前に必要な回数接種するというものが、代表的である。

    表1 ワクチンの接種時期

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    例えば、HPVは性的接触で感染するため、HPVワクチンは感染リスクが高くなる前の小学生や中学生に接種する必要がある。また、日本では公費助成で受けられる時期に接種しないと任意接種と見なされ、費用がかかってしまうことも接種時期を決定する要因となっている。

  • ワクチンと免疫・副反応

    生ワクチン接種後は、自然感染に近い形で免疫を獲得するため、ウイルス増殖による副反応の強さに応じて高い免疫が誘導される。一方、不活化ワクチンは接種して自然免疫を働かせることで特異免疫を誘導する。自然免疫が働くということは炎症が起こるということであり、局所反応が強いほど一般に特異免疫が高くなる。副反応と免疫原性は、パラレルに動くのである。生ワクチンの副反応は、弱毒化したウイルスが体内で増殖する時期に一致して、原疾患と類似の症状が認められることがあるが、不活化ワクチンはウイルス増殖による臨床反応は出現しない。不活化ワクチンでは免疫応答を高めるためにアジュバントが添加されている。ワクチン様粒子(VLP)ワクチン接種により高い免疫応答が得られるならば、ワクチン接種後数年間継続して高い値で抗体価が維持される(図2)。例えば、HPV-16/18 型の2価ワクチンは、AS04という特別なアジュバントを含有していることから、臨床試験上、自然感染で得られる抗体価を有意に上回る値でプラトーになっており、理論上この高い値が持続すると考えられる。

    図2 自然感染およびワクチン接種後の抗体価の推移(仮説):ウイルス感染と生ワクチン

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