第1回ワクチンフォーラム

パネルディスカッション 予防接種推進における実地医家の役割 ~お母さんと子どものために~

総合司会:国立病院機構 三重病院 院長 庵原 俊昭 先生、国立病院機構 福岡病院 統括診療部長 岡田 賢司 先生

パネリスト:みなみクリニック院長(小児科) 南 武嗣 先生

パネリスト:みなみクリニック院長(小児科) 南 武嗣 先生

パネリスト:みなみクリニック院長(小児科) 南 武嗣 先生

パネリスト:みなみクリニック院長(小児科) 南 武嗣 先生

パネリスト:みなみクリニック院長(小児科) 南 武嗣 先生

ワクチンの種類が急に増えたわが国では、今、ワクチンの有効性を最大限引き出すためにも、生後3ヵ月ではなく、生後2ヵ月からの「ワクチンデビュー」が求められている。さらに、医療従事者の予防接種に関する正しい認識と、保護者への適切な説明のもとで啓発を進めていく必要がある。今回、実地臨床でご活躍中の先生方に、接種のコツや指導の工夫についてご意見をいただいた。

  • 南 武嗣 先生 嘔吐・下痢症の重症例の大半はロタウイルス胃腸炎!

    ロタウイルス胃腸炎は、激しい嘔吐と水様性下痢を繰り返し、重度の脱水を引き起こしやすい。脱水には経口での補水が推奨されているが、ロタウイルス胃腸炎による脱水ではそれが困難なケースを多く経験する。
    当院で急性胃腸炎の患児を調査したところ、点滴治療あるいは入院を要した患児の2/3はロタウイルス胃腸炎であった。ロタウイルス胃腸炎に罹患した患児のうち、入院が約12%、点滴治療が約14%、と全体の1/4を占めていた(図1)。急性胃腸炎、いわゆる嘔吐・下痢症の重症例の大半はロタウイルス胃腸炎が原因である。ロタウイルスワクチンによりこれらの重症例が予防されれば、入院や点滴を著しく減少させる可能性がある。小児科外来や小児救急医療の診療現場を大きく変えるものと期待する。

    図1 重症化しやすいロタウイルス胃腸炎とワクチンの役割

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  • ロタウイルスワクチン接種の工夫

    ロタウイルスワクチンは経口接種のワクチンである。しかし月齢の小さい子どもに、ワクチンを経口で接種させることはなかなか難しいものである。そこで、母親に模倣反射を利用した接種の方法を説明している。具体的には、まず名前を呼ぶなどして子どもの注意を母親に向けさせ、目と目を合わせて「モグモグ・ゴックン」という飲む振りをしてもらう。そうすると子どもは模倣反射で上手にワクチンを飲むことができる。また、上手に飲めた際には、必ず子どもを褒めることを忘れてはならない。

    図2 ロタウイルスワクチンの飲ませ方のコツ

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  • 今井 章介 先生 小児科医と産婦人科医の連携

    我々の施設は小児科と産婦人科が併設された民間病院であり、両科が連携してワクチン接種の啓発に努めている。乳児期早期からのワクチン接種を推進する上で、簡単な情報であっても繰り返し母親に伝えることが重要である。しかも、口頭説明だけでなく、視覚に訴えるものを活用すべきである。我々の施設では、パンフレットを渡す(産科退院時より1ヵ月健診時がよいと思われる)、外来・病棟にポスターを掲示したり、DVDで映像を流す(不妊外来患者さんへの配慮を要する)など、視覚支援資材を取り入れている。また、さらなるワクチンに対する意識向上には、母児と密接に接する看護師や助産師、保健師の方々の役割は相当に大きく、これら医療スタッフとの最新のワクチン情報の共有も不可欠である。我々の施設では、毎月2回ほど、勉強会を開催して医療スタッフの教育に注力している。

  • ワクチン接種推進活動のタイミング

    生後2ヵ月からのワクチン接種率を高めるためには、事前説明のタイミングが重要であると考える。出産前のプレママの間は、無事に生まれるかどうかが最大の関心事でもあり、ワクチン啓発のタイミングとしては効果が薄いようである。やはり、出産後の保健師(助産師)訪問時、1ヵ月健診時が重要である。加えて、母親は助産師・保健師らとよくコミュニケーションをとっていることを利用すべきである。当施設の分院である「愛産婦人科」を例にとると(図3)、1ヵ月健診以降に“子育てサロン”を開き、母親たちが自由に集まり、助産師・看護師をまじえて子育てについて雑談する場を提供している。このような機会も生後2ヵ月からのワクチンデビューの意識付けに寄与するものであり、ここにも小児科と産科の協力が求められる。

    図3 妊産婦・ベビーとのかかわり (育愛会 愛産婦人科の例)

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  • 竹内 理恵子 先生 妊娠中からの予防接種に関する情報提供

    妊婦・産婦・褥婦は、妊娠中から出産までは自身の生活や身体の変化、出産後は育児に関することのみに専念しがちである。その中で、のようにワクチン接種の重要性をさまざまな機会に伝えたとしても、十分な理解を得ることは簡単ではない。ただ、妊婦の両親あるいは夫が第三者的立場でワクチン接種の必要性をしっかりと理解すれば、熱心に資料を何度も読み返すようになり、妊婦のよいサポーターとなる。特に夫は、より一生懸命になる傾向があると思われる。

    表1 クリニックにおける情報提供

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  • 助産師、保健師への情報提供

    助産師、保健師は、乳幼児が罹患しやすい感染症について知っていても、重症例を目の当たりにする機会がほとんどない。そのことが、感染症に対する危機意識をときに薄めさせてしまうのではないかと考えている。
    それでも、重症化した患児の経過について、その場に従事した医療者から経験談として聞くことで、助産師、保健師らは想像することができる。それによって、ワクチン接種の本来の重要性に気付くことができるのである。
    実際に母親からワクチンの質問を受けたとき、その臨場感を思い出して、初めて適切なワクチン接種に関する説明を行うことができるものと考える。

  • 佐藤 雄一 先生・福田 小百合 氏 子宮頸がん予防ワクチンの啓発活動

    近年、新しいワクチンが続々と登場しているが、子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)もその1つである。子宮頸がんの主たる発症原因はヒトパピローマウイルス(HPV)の感染である。HPVに対するワクチンを接種することで、子宮頸がんの発症を抑制することができる。当施設ではNPO法人ラサーナを設立し、中高生やその保護者を対象とした子宮頸がん予防の教育、一般女性を対象にしたイベント等を通じて、啓発活動を推進している。
    HPVワクチンは、2013年度より定期接種の対象として検討されているワクチンの1つであり、HPVワクチン定期接種化を機に、接種者がより子宮頸がん予防の知識を深めるとともに、ワクチン・検診を普及させていきたいと考えている。
    HPVワクチンには、子宮頸がんに適応のある2価ワクチンと、尖圭コンジローマの適応もある4価ワクチンとがある。ワクチン接種の希望者には、2つのワクチンについて十分に説明を行った上で、使用するワクチンを選択していただいている。子宮頸がん予防の発症ピークは30代であり、ワクチンには、十分な効果が長く持続することが必要であることを伝えた上で、2価ワクチンについては、免疫力が強く、効果が長く続くことを紹介している。

    図4 2つのワクチンをわかりやすく

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  • パネリストの先生方のまとめ

    南 武嗣 先生

    ロタウイルス胃腸炎は重症化しやすい疾病である。ワクチンを接種することで重症化を予防することが可能であれば、点滴治療や入院などは劇的に減少するものと思われる。ロタウイルスワクチンの早期の定期接種化を望んでいる。

    今井 章介 先生

    出産入院時には、いろいろな視覚的支援資材によるワクチン接種への意識付けが大切であるが、さらなる工夫が必要と思われる。出産後2ヵ月までに行われる助産師あるいは保健師らとのコミュニケーションは、母親に生後2ヵ月からのワクチンデビューを認識させるよい機会であると考える。今後、さらに助産師、保健師らとの連携は重要となっていくであろう。

    竹内 理恵子 先生

    出産直前の妊婦は、ワクチン接種にまで意識を広げることは難しい。妊婦の家族に対しても情報提供することで、妊婦のよいサポーターとなり2ヵ月齢からのワクチンデビューを効果的に啓発することができる。一方、助産師、保健師は、積極的にワクチン接種について説明する必要がある。

    佐藤 雄一 先生・福田 小百合 氏

    子宮頸がんの予防には、子宮頸がんが性交渉の際のウイルス感染から生じるということ、またその一次予防のためにはワクチンが有効であること、二次予防のためには検診が有効であることを、中高生・その保護者に向けて継続して情報提供することが重要と考えている。今後も子宮頸がん予防の一助として講演や勉強会などの活動を積極的に行い、検診率の向上とワクチン接種の重要性について啓発していきたい。