ここから本文です
ロタウイルス胃腸炎は、激しい下痢やおう吐によって脱水を起こしやすく、けいれんがみられることもあるため、もっとも重症化しやすい乳幼児の胃腸炎といわれています。
「ロタウイルス胃腸炎」について知り、早めのワクチン接種で赤ちゃんを守ってあげましょう。
先生に聞く、ロタウイルス胃腸炎について
赤ちゃんがかかりやすい病気、ロタウイルス胃腸炎とその予防について、すがやこどもクリニック院長の菅谷明則先生(NPO法人 VPDを知って、子どもを守ろうの会 理事長)がお話してくださいました。
-
ロタウイルス胃腸炎とは?
ウイルスが原因の感染性胃腸炎
ロタウイルス胃腸炎は、乳幼児に多く起こる感染性胃腸炎のひとつで、ロタウイルスというウイルスが原因です。
ロタウイルス胃腸炎は、乳幼児がかかりやすい胃腸炎のなかではもっともひどくなりやすいことが知られています。
こまめに水分を与えているつもりでも、おう吐や下痢がひどいと、水分補給が間に合わなくなったり、赤ちゃんが口から何も受けつけなくなったりします。こうなると、体の小さな赤ちゃんは、急激に脱水が進みますので、すぐに適切な処置をしないと命にかかわることもあります。
また、ロタウイルスは、インフルエンザ、突発性発疹に次ぐ、乳幼児の脳炎・脳症の原因であることが報告されています。
もし脱水症状や、けいれん、意識障害が少しでも現れたら、すぐに医療機関を受診しましょう。5歳までに1回はかかります
ロタウイルス胃腸炎は、世界中のほぼ全員が5歳までに1度は経験する*1といわれています。しかし、体が小さいうちに初めて感染すると重症化しやすく、入院による治療が必要になることもあります。
日本では、ロタウイルス胃腸炎で入院する小児は、生後3か月齢から増えはじめ、生後6~17か月齢がピークです*2。
一方、ロタウイルスに2~3回感染すると免疫がつき、その後は感染しても胃腸炎の症状は軽くなっていきます。*1 国立感染症研究所.「ロタウイルス感染性胃腸炎とは」
(2013年5月15日)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/3377-rota-intro.html (2023年2月確認)
*2 Kinoshita S, et al. Jpn J Infect Dis. 2014; 67(6): 464-468.つらい下痢やおう吐が7日間程度続きます
激しいおう吐や白っぽい水のような下痢が特徴的なロタウイルス胃腸炎は、他の胃腸炎よりも回復に時間がかかります。
通常、症状がおさまるまで7日間程度必要とされ、この間に繰り返される下痢やおう吐により、脱水を起こしやすくなります。根本的な治療はまだありません
今のところ、ロタウイルス自体に効く薬はなく、下痢やおう吐を薬で止めることはしません。そのため、ロタウイルス胃腸炎にかかったら、こまめな水分補給で脱水を防ぎ、自然に治っていくのを待つしかありません。
手洗いや消毒だけでは防ぎきれません
ロタウイルスは環境に強く、おもちゃやタオルに付着したような環境で生存でき、条件が合えば約10日間生きています。また、石けんや消毒用アルコールにも強いため、哺乳瓶用の消毒液などの塩素系漂白剤(消毒薬)でしっかり消毒しなければ取り除けません。
さらに、胃腸炎の症状がおさまった後も約1週間は、何兆個ものウイルスが便中に排泄されているといわれています。赤ちゃんなら、わずかな数のウイルスがあれば感染して胃腸炎を起こしますので、保育施設などで、ひとたび誰かが感染すれば、手洗いや消毒をしていても、ロタウイルス胃腸炎がひろがってしまうこともあります。 -
ロタウイルス胃腸炎はワクチンで
予防しよう!ロタウイルス胃腸炎はワクチンで予防可能
ロタウイルス胃腸炎は、手洗いなど、衛生状態を良好にすることが予防につながりますが、十分ではありません。感染力が強く、重症化しやすいロタウイルス胃腸炎から小さな赤ちゃんを守るために、WHO(世界保健機関)はワクチン接種を推奨しています*。
海外では、130か国を超える国でワクチン接種が行われています。日本では、2011年11月から接種が可能になり、2020年10月からは定期接種となりました。
* WHO. Immunization, Vaccines and Biologicals, Rotavirus
Rotavirus (who.int) (2023年2月確認)ロタウイルスワクチンは飲む生ワクチン
ロタウイルスワクチンは、ロタウイルスの病原性を弱めて増殖させ、精製後シロップ状にした飲む生ワクチンです。
ロタウイルスワクチンを接種すれば、自然に感染したときと同じように、胃腸炎の重症化を抑える効果が期待できます。
NP-JP-NA-WCNT-230004 2024年5月